かれおの日記

食べて寝て本読んだら、だいたい幸せ

「勇気」の科学 一歩踏み出すための集中講義(ロバート•ビスワス=ディーナー)

 

  • 勇気はある状況では効果的だが、性急な行動は悪い結果を招く
  • 臆病すぎず大胆すぎず生きる
勇気には二つの主要な要素がある。
「行動意志」と「恐怖のコントロール」。

勇気とは危険、不確実性、恐怖があるにも関わらず、同義的で価値ある目的に向かっていく「行動意思」。「行動意思」と「恐怖のコントロール」は必ずしもシーソーではない。恐怖が大きくても強い行動意思を持つ人もいる。

アリストテレスは、勇気を中庸としてとらえた。勇気を高い理想としながらも、それは賢く実践しなければならないと考えた。人は勇敢でなければならないが、同時にそれは適度なものでなければならない。 つまり勇気はある状況では効果的だが、性急な行動は悪い結果を招きいれる。

人が近づくと臆病なカモはすぐ逃げる。最初に逃げた臆病なカモは食料を得るチャンスを失う。最後まで残っていた大胆なカモは、命を危険に晒した。長い目で見れば、生き残るのは臆病すぎず大胆すぎず二番目に逃げた大半のカモ

 

  • 怒りによって行動しようとする時は、自分にとって本当に大切な価値観を侵害されたかどうか

怒りの感情によって、自らの能力についての疑いや、自分の身を守るかどうかという不安を乗り越え、強い気持ちで即座に行動するよう駆り立てられる。

怒りは、勇気と密接な関係を持つ感情。血が滾るような怒りを感じることで、人間は目の前の困難と対決する準備を整える。良好な人間関係や気持ちの上では良いものではない。しかし、ある局面においては幸福感よりも効果的な感情。


ただし、勇気を高めるための手段として、怒りを使うことにはデメリットもある。怒りによって私たちは冷静に行動しにくくなる。そのため、怒りに突き動かされた人の行動は、適切なアプローチから外れたものになる。 怒りが自分自身に向けられた場合、自分を責め自分を罰することになる。 さらに怒りが外に向けられる場合、対立し周りから遠ざけられる。

強い怒りの感情によって、勇気を引き上げることを考える上で大切なポイントは、自分が大切にしている価値観を基準にすること。 自分の基本的な原則が踏みにじられていると感じる時、怒りを増大させる。 怒りを感じそれによって行動しようとするときは、自分にとって本当に大切な価値観を侵害されたものであるかどうかに注目する。

 

  • 勇気指数をあげるには、幸運と自信の好循環

達成動機とは、困難な状況においても成功を強く願う意欲。達成動機が低い人は、簡単に出来ることだけに取り組もうとし、自信のあるエリアに止まる。 運を確かなものだとみなすと、自信が深まり、ポジティブな結果が得られるという確信が高まる。その結果、行動意思が強まり、勇気指数を上げることができる。

それには、

1.自分は幸運な人間であると言い聞かせる。 その成功の一部は幸運がもたらしてくれたもの、と考える。これにより「現実世界の成功」という確かな証拠をもとに、運が存在するという考えを強化する。

2.運を記録する。 幸運な出来事とその程度を記録する。不運は記録しない

また、勇気とは多くの場合、他者のためのもの。 他者を助けられると考えると、勇気指数を高められる。

  • 防衛的悲観主義を繰り返すと、勇気を出す習慣がなくなる

私たち現代人は、人生は思いのままにコントロールできるはずだという考えを抱いている。その結果、失敗をあってはならないものと捉え、できる限りそれに抗おうとする。

しかし多く現代人に見られる、老いることへの抵抗と同じく、それは負けることが保証された戦い。 人は失敗した時の言い訳になるようなハンデキャップをあえて自分に与えようとする。 寝不足だったという言い訳をするために実際に徹夜したりする。

防衛的悲観主義は、将来の期待を低く設定し失敗に備えようとする。 どうせダメだろうと思い、事前に予測しておく事によって、実際に失敗した時のショックを和らげようとする。見込みを低くしておくことで、成功した時に大きな喜びを手に入れようとしている。 この防衛的悲観主義は、勇気を高めるという点では最悪のアプローチ。消極的になり、勇気に求められる情熱で自動的な反応が取りにくくなる。

 

  • 目標を諦めても価値に注目することで、前に進む勇気を得られる

諦める言葉は、二つに分けられる。

一つは努力を諦めることと、もう一つは目標を諦めること。

例えば、カヤックを作るという目標で得ようとしていたのは、「何か手作りをしたい」「職人的に学んでみたい」という欲求を満たすことだった。

これを明らかにすることで、目標を諦める代わりに、別の方法でこれらの価値を満たそうとすることができる。カヤックは大きすぎる目標だった。だったら、陶器づくりに替えようとか。


目標を諦めるという考えは、私たちを恐れさせる。しかし最も大切な価値に注目することで、それを満たす方法が他にもあることを理解できる。それまでの目標を諦めることによる精神的な打撃を和らげ、新たな目標に向かって前に進む勇気を高めることができる。

気乗りしない目標に向かって力なく進もうとするよりも、それまでの目標を諦めるという失敗を積極的に行い、代わりに新たな目標によって同じ価値を目指す。

 

  • 失敗に対する捉え方を変えれば、勇気ある行動がとれる

人前でのスピーチやプレゼンの前には、私たちの多くが強い不安を感じる。 これについての実験。

最初のグループには、絶対にミスをしないようにと指示する

2番目のグループには、意図的にミスを無視する、ただしミスをしても問題なく安心するように指示

3番目には意図的にミスをこと、逆にそのミスを活かしてプレゼンを効果的にすることを指示する。

 

上手くいったのは、あえて失敗をした3番目のグループ。 

ミスは許容するだけでは不十分で、創造性や自発性の源となると捉える。ただしあくまでも小さなミスに対して。 大事な場面ではあえてミスをするというアプローチは使わない。


望み通りのことを実現できないのは、人生では当たり前。
しかし、何かが不十分であるという感覚を持つことは、大きな心理的痛になる。失敗を、目標に到達するために不可避的に遭遇するものだと捉え直すことで、特に行動意思が強まり、勇気指数を高める。

 

目標への道のりが、まっすぐで平坦なものであることは滅多にない。そして小さなミスや逆境が、むしろ軌道修正のために必要なものだということは、誰もが知っている。失敗への不安を取り除くことは、失敗を取り除くことではない。 人生から失敗を排除することは不可能。しかし失敗することへの不安は、減らすことができる。それによって勇気ある行動を取りやすくなる。